Lampというバンドをご存じでしょうか。
2000年に結成された日本のバンドで、男女混合のボーカルに、ボサノヴァやAORなどを取り入れた洒脱な音楽となっています。
未聴の方はぜひ
こちらのリンクから
大きな知名度はなく、知る人ぞ知るバンドとなっていますが、コアな音楽ファンの間で根強い人気を誇っています。
そのLampがどういうわけか「多くの海外の音楽リスナーに聴かれてる」と、最近ネットで話題となっています。
日本でもそこまで有名ではないバンドが、どのように海外で人気になったのか。
本記事ではLampの海外人気やその要因について、下記の順番で説明していきます。
- Lampの海外人気
- どのように人気になったか
- なぜ人気になったか
*なおこの記事を書き上げるにあたって、音楽データ分析ツール「Chartmetric」によるデータ/グラフを多く使用しています
海外人気について
1. Lampの海外人気
Lampは実際に海外で人気があるのか、まず次の3点について、他の海外で人気のアーティストと比較してみました。
- Spotify(月間リスナー数)
- YouTube(登録者数)
- Instagram(フォロワー数)
アーティスト | Spotify | YouTube | |
---|---|---|---|
Lamp | 224万人 | 15万人 | 17万人 |
坂本龍一 | 215万人 | 24万人 | 38万人 |
Nujabes | 150万人 | 14万人 | 5万人 |
Perfume | 100万人 | 101万人 | 50万人 |
the pillows | 36万人 | 9万人 | 1万人 |
Fishmans | 25万人 | 8,600人 | – |
YMO | 22万人 | 2万人 | – |
Cornelius | 20万人 | 4万人 | 4万人 |
比較すると、Lampは特にSpotifyの月間リスナー数が多く、坂本龍一やNujabesといった名だたるアーティストをも凌駕しています。
またYouTubeの登録者数やInstagramのフォロワーも比較的多く、常にコメント欄が英語で埋まってることから多くの海外ファンがついてることが伺えます。
さらに「Chartmetric」を使い、ファン層の国籍を確かめてみました。
Instagramではフォロワーの大半がアメリカやインドネシアで、Spotifyに至っては上位10ヶ国が全て日本以外の国となっています。
Wikipediaも日本より海外の方が充実しており、Lampが海外で人気があるというのは、どうやら間違いないようです。
音楽的な評価は
次に音楽的に「どのように評価されてるか」、アメリカ最大の音楽コミュニティ「Rate Your Music」(RYM)を見てみましょう。
右端の数字がレビューの点数(5点満点)で、3.5点以上だとかなり高い評価と言えます。
Lampの場合、1作目から7作目まで全てが3.5点以上となっており、どのアルバムも高く評価されてることになります。
中でも2作目の『恋人へ』は3.87点と、Lampのみならず歴代の日本のアルバムと比較しても18位に入るほどの高評価です。
各種メディアのレビューを集計するAOTYでも作品がどれも80点前後で、Lampの音楽性が海外で高く評価されてることが伺えます。
1. Lampの海外人気
- Spotifyでのリスナー数は他の名だたるアーティストをも凌駕する勢い
- YouTubeやInstagramも英語で埋まっており、リスナーの大半が外国人
- 音楽的にも海外の各種メディアで高く評価されている
地盤固め
2. どのように人気になったか
このようにLampは海外で大きく注目されていますが、実はここまで人気が急上昇したのは2021年になってからのことです。
そのことを説明する前に、まずLampがどのように海外人気の地盤を固めていったか、下記の3点について説明します。
- サブスク配信
- 4chanとRYMでの人気の高まり
- 勢力的な海外ツアー
1. サブスク配信
2018年になってから、SpotifyやApple MusicでLampのアルバムの配信が始まります。
これで、YouTubeやSoundCloudでしか聴く事ができなかった海外の人々もLampの作品に容易にアクセスできるようになります。
海外掲示板「Reddit」の「どのようにLampを見つけたか」というスレでも、複数の人がSpotifyに紹介されたと証言しています。
とはいえ、Lampの染谷大陽氏は当時、サブスクに懐疑的な印象を抱いていたようです。
僕はラジオやお店での試聴以外はCDを買って初めて中身を聴ける世代で育ったので、正直なところ、このサブスクには抵抗がありますし、こういう世の中になったことを肯定できずにいます。これは音楽産業にとってプラスであるというような、前向きに捉えている意見をよく目にしますが、今後、良い録音作品は減っていくような気がしてなりません。
そして後述しますが、この「懐疑的な印象」はやがて変化を遂げることになります。
2. 4chanとRYMでの人気の高まり
Lampと同じく海外で爆発的に人気になったバンドにフィッシュマンズがいます。
彼らは海外の画像掲示板「4chan」の音楽板(/mu/)で人気に火がつき、その人気が音楽コミュニティのRYMに伝播しました。
Lampも同じく、2015-16年頃に「4chan」で「渋谷系」として注目され、その後RYMで評価されるようになります。
下記画像は「4chan」の住人たちが2017年に作った「日本の必聴盤」で、「渋谷系」にアルバム「恋人へ」が入っています。
RYMでは「恋人へ」が特に高く評価されていますが、この「4chan」での評価を受け継いだものと考えて良いでしょう。
こうしてLampは、海外の音楽マニアたちに知られる存在となります。
3. 勢力的な海外ツアー
2017年にLampは「中国・台湾・香港 8都市ツアー」を敢行、延べ2000人を超えの動員、CDも全て完売等、大盛況だったそうです。
また韓国でも、2006年のライブチケットの売り上げが東京を超えるほどの盛況で、それから度々韓国公演を行なっています。
さらに2018年のジャカルタ(インドネシア)でのライブでは、日本語で大合唱が起きるほど盛り上がります。
インドネシアではVira TalisaやMondo Gascaro、MoccaやWhite Shoes & The Couples CompanyなどLampのようなソフトでメロウな音楽があったこともあり、Lamp人気はすでにあったようです。
こうしたアジア諸国を中心とした勢力的なツアー活動から、Lampはアジア各国で支持される基盤を築き上げました。
A都市の秋
ちなみに、サブスク配信以前から海外で人気だった曲に「A都市の秋」があります。
まず2015年に、米国の投稿型SNS「Reddit」で、この曲の音源が投稿されます。
大きなコミュニティだったこともあり、大量のコメントがつき、一躍人気となります。
サブスク配信の2017年には、「A都市の秋」がSpotifyのバイラルチャートにランクイン、SoundCloudでも1万Likeがつきます。
2019年にはオンラインゲーム「Fortnite」のプレイヤー「Howl」の影響で、プレイ動画とともに「A都市の秋」を流すブームも。
さらに2020年初めにSpotifyでの再生数が100万回を突破するなど、同曲は海外でのLampの知名度を牽引する役割を果たしました。
爆発する人気
このようにLampの人気は海外で徐々に高まっていき、そして2021年に「大きな転換点」を迎えることになります。
2021年4月26日、TikTokで「nightlooms」というユーザーがLampの楽曲「ゆめうつつ」を使った動画を投稿します。
この動画に海外のLampファンたちが反応し、やがてTikTokで「ゆめうつつ」を使った動画が投稿されるようになります。
そして「ゆめうつつ」は瞬く間にブームとなり、数ヶ月間で数万件もの動画に使われます。
そして翌年の2022年、この「ゆめうつつ」のブームに続く形で、他のLampの曲も次々とTikTokでバズり始めます。
下記はTikTokでバズった曲と、(恐らく)バズるきっかけとなった動画の投稿日です。
投稿日 | 曲名 | 動画 | 再生回数 |
---|---|---|---|
2022/1/6 | A都市の秋 | 削除済み | 288.8K |
2022/1/16 2022/1/17 | 二十歳の恋 | 動画 動画 | 207.8K 2.4M |
2022/6/15 | 恋人へ | 動画 | 180.5K |
2022/7/27 2022/8/1 | 部屋の窓辺 | 動画 動画 | 161.5K 977.2K |
2022/11/4 | 君が泣くなら | 動画 | 422.2K |
さらに2022年末には「Lampの自己紹介の音声とヌジャベスの音楽を組み合わせた音源」までもが、多くの動画で使われます。
そして、こうしたTikTokのブームはYouTubeやサブスクにも波及します。
例えば「Spotify」に目を移すと、TikTokがバズった2021年以降、大きくフォロワー数を増やしています。
下記はアメリカ人によるGoogleでの「Lamp」の検索数で、2021年から急上昇しています。
YouTubeでも「ゆめうつつ」がバズった2021年6月頃から、Lampの曲やアルバムがアルゴリズムの仕組みでYouTube上で多く表示され、再生回数を大きく伸ばします。
実際に「hadzy.com」でYouTubeについたコメントを抽出すると、「Recommend」や「Algorithm」といったアルゴリズムに言及する言葉が多く並んでいます(下記画像)
またTikTokには楽曲のテンポを速める「Sped Up」という文化があり、このリミックス版の音源もYouTubeに大量に輸入されます。
このように2021年にTikTokで「ゆめうつつ」がバズったことで、Lampは一気に海外から注目されるようになります。
2023年には
こうしたLampの海外人気は、2023年にさらに加速していきます。
まずYouTubeでLamp公式チャンネルの視聴数が急増します。
観測日 | 視聴数 | 増加 |
---|---|---|
2022/3/13 | 420万 | – |
2022/4/4 | 440万 | 20万 |
2022/4/6 | 2720万 | 2280万 |
2022/4/28 | 2800万 | 80万 |
2023年4月4日から6日までのわずか二日間で、視聴数の累計が6倍以上になっています。
正直、あまりの変動ぶりに、最初は収集したデータが間違ってることを疑いました。
しかし、公式チャンネルの動画のコメント欄を見ると、どの曲も2023年4月頃からコメントが急増しており、データと一致しています。
恐らくYouTubeのアルゴリズムで、2023年4月に公式チャンネルの動画が大量に紹介されたものだと思われます。
なかでも「ゆめうつつ」は現時点で視聴数が1000万回を突破するなど、TikTokやSpotify同様に多く視聴されています。
そしてTikTokでも、前年に引き続きLamp人気がさらに爆発します。
というのも、2023年7月頃から「ゆめうつつ」がTikTokでインフルエンサーたちに次々と使われるようになったのです。
投稿日 | 投稿者 | フォロワー数 |
---|---|---|
7月16日 | @annaxsitar | 1220万人 |
7月17日 | @tabithaswatosh | 1370万人 |
7月21日 | @peytoncoffee | 1600万人 |
7月23日 | @annabananaxdddd | 1250万人 |
8月14日 | @peytoncoffee | 1600万人 |
このことにより「ゆめうつつ」がとてつもなくバズり、6月には7万本ほどだった動画が8月末までで30万本以上に増えます。
下記はLampの楽曲をTikTokの動画投稿数が多い順に並べたものですが、「ゆめうつつ」の投稿数がずば抜けて高いのが分かります。
さらには「Lamp引退説」という虚偽の情報までもがTikTokで話題になるのですが、ある意味LampがどれだけTikTokで注目されてたかが伺えるエピソードだと言えるでしょう。
TikTokが起こしたブーム
TikTokでバズった曲の中でも、「恋人へ」はドラマチックな経緯を持ちます。
「恋人へ」は「ゆめうつつ」がバズった翌月、2021年7月ごろからTikTokで少しずつ投稿数を伸ばしていました。
投稿数は「ゆめうつつ」と比べると緩やかなものでしたが、2022年6月15日、下記の動画が投稿されてから状況が一変します。
「恋人へ」の音楽をBGMにして、海の前に二人の男女が佇むというこの動画。
これは言うまでもなく、アルバム『恋人へ』のジャケを再現したものです。
そして翌日に、この動画へのリアクション動画も投稿されます。
これらの動画がバズったことで、「恋人へ」のBGMとともに男女が海岸に立つ動画がTikTokで次々と投稿されます。
こうしたブームから、アルバムジャケそのものにも注目が集まり、同じような写真やファンアートも多く作られることになります。
例えばツイッターでは、海外のアカウントが投稿した『恋人へ』のジャケやファンアートに数多くの「いいね」がつきます。
Facebookでも、ジャケを砂浜に描いた海外の投稿が2万以上の「いいね」を獲得します。
そして2023年に、「海外で最も聞かれた楽曲」を表彰する「Japan to Global 2022」で「恋人へ」がノミネートされます。
「恋人へ」は現在Spotifyで「ゆめうつつ」の次に再生回数が多く、TikTokの影響力の強さを感じさせるエピソードです。
2. どのように人気になったか
- サブスク配信や海外ツアー、ネットでの人気や「A都市の秋」のバズりで徐々に海外で知られるように
- 2021年にTikTokで「ゆめうつつ」がバズり、その人気が他のLampの曲にも波及、一躍大人気に
- TikTokでは『恋人へ』のジャケのように男女で撮るブームも
淡くメランコリックな音楽
3. なぜ人気になったか
Lampの楽曲は何故ここまでTikTokで多くの人に使われたのでしょうか。
Lampが「海外の人々に受けた理由」として、以下の3点が考えられます。
- 音楽性
- リスナー層
- ビジュアルアート
1. 音楽性
TikTokで使われた「ゆめうつつ」や「二十歳の恋」は、ゆったりとした曲調で、どこか淡くメランコリックな響きを持っています。
YouTubeに目を通しても、センチメンタルに浸るようなコメントが多く見受けられます。
Lampのように海外で人気を伸ばした歌手に青葉市子がいますが、TikTokでバズった彼女の曲もまた、淡く幻想的なムードです。
こうしたムードの楽曲は、「日常の何気ない風景」をドラマチックに演出するうえで効果的だったのではないかと考えられます。
ちなみにLampと青葉市子はどちらも「音楽の空気感」が似ていることから、海外では両者がよく並べて語られています。
2. リスナー層
「Instagram」でLampをフォローしてるユーザー層を分析すると、その多くは「10-20代の英語圏の女性」となっています。
アメリカでTikTokが10-20代の女性に特に使われてるというデータもあり、Lampの音楽性がTikTokの層に合致したと言えそうです。
3. ビジュアルアート
アルバム『恋人へ』のジャケがブームになったというのは先ほど話した通りです。
実はアルバム『ランプ幻想』のジャケも人気があり、ジャケを模したアクセサリーや造花などが作られ、各種SNSでアップされます。
それ以外のLampのジャケも人気があり、アプリ「Shuffles」などではこうしたジャケを組み合わせた画像が大量に上がっています。
またLampがSNSに投稿するアナログな写真も、彼らのノスタルジックな音楽性を想起させるもので、ブームになった『恋人へ』のジャケもまさしくその一枚だと言えます。
音楽性とともに、こうしたビジュアル面による世界観も、Lampが多くの海外リスナーを惹きつける魅力になってると思われます。
Lampはシティポップ?
話は逸れますが、Lampの海外人気の理由に「シティポップブーム」を挙げる人がいます。
「シティポップ」とは、日本で70-80年代に流行った音楽で、2010年代にサンプリングやYouTubeのアルゴリズムの影響で、海外の音楽マニアの間で話題になりました。
Lampの音楽が持つどこかノスタルジックな空気感は、確かに古き日本を描いたシティポップと親和性があるかもしれません。
しかし海外で人気のシティポップは、その大半がファンキーでアップテンポという印象です。
一方、Lampに関しては、近い曲調の曲はあるものの、TikTokでバズった曲の多くが前述のものと正反対の特徴を持っています。
さらに海外ではLampは「渋谷系」として括られることも多く、一連のシティポップの流行からは分けて考えるべきかもしれません。
ちなみに下は海外のシティポップコミュニティで作られた「シティポップの必聴盤」ですが、こちらにもLampの姿はありません。
急に注目された曲たち
興味深いのは、Lampの「ゆめうつつ」や「二十歳の恋」はTikTokで大人気になるまで、そこまで注目されてなかったところです。
下記は2019年にLampが様々なSNSを通して開催/集計したランキングの結果で、多くのLampファンが参加しました。
ブログでは結果が50位まで掲載されておりますが、「ゆめうつつ」は44位で、「二十歳の恋」に至っては選外となっております。
この後に「メンバーが選ぶベスト20」も発表してますが、三人のうち染谷氏が「ゆめうつつ」を12位に入れた他は選外となってます。
TikTokによって、それまで注目されてなかった曲が突如脚光を浴びたわけで、これもまたネット文化の面白さですね。
ちなみに下記の画像は、中国の「Xiami」という音楽サイトで特に聴かれているLampの曲トップ20(2019年時点)です。
ここでは「二十歳の恋」が一位となっており、海外の人を惹きつける魅力がこれらの曲にあるのかもしれません。
Spotifyが伸びた理由
Spotifyに話を移すと、2022年11月ごろを境に月間リスナー数が一気に増えています。
年/月 | 月間リスナー数 |
---|---|
2018年 12月 | 5万人 |
2020年 5月 | 10万人 |
2021年 3月 | 50万人 |
2022年 11月 | 100万人 |
2023年 1月 | 150万人 |
2023年 8月 | 200万人 |
なぜこの時期から、SpotifyでLampを聴く人が一気に増えたのでしょうか。
この理由として、以下の3点が考えられます。
- TikTokでの大ブーム
- Spotifyのプレイリスト
- Facebookでのバズり
1. TikTokでの大ブーム
前述した通り、2022年はLampの楽曲が次々とTikTokでバズった年です。
2022年11月は「君が泣くなら」がバズった時期でもあり、こうしたTikTokでの人気が波及したものだと考えられます。
2. Spotifyのプレイリスト
Lampの入門用プレイリスト「This Is Lamp」も理由として考えられます。
恐らく当時の海外人気を受けて公式が作成したこのプレイリストは、この書き込みを信じるなら2022年8月に作られたようです。
「恋人へ」など現在Spotifyで人気の曲が先頭に並んでおり、多くの人に対してLamp入門の役割を担ったと言えそうです。
また2022年11月6日に、Spotifyの巨大プレイリスト「Chill Vibes」に「ゆめうつつ」が追加されています。
登録者数が200万人以上と非常に人気のプレイリストで、100曲以上ある中で「ゆめうつつ」は常に先頭から10曲目以内をキープしていた為、多くの人に聴かれることになります。
さらにその影響か、翌月の12月から「ゆめうつつ」が再びTikTokでバズり始めます。
3. Facebookでのバズり
2022年の年末にFacebookで、安藤尋監督の映画『blue』(2003年)と「ゆめうつつ」を組み合わせた動画が投稿されます。
この淡く切ない雰囲気が受けたのか、この投稿がかなりバズり、その人気はSpotifyの再生数にも反映されます。
下の二つの図は「FacebookでのLampに関する投稿」と「Spotifyでの再生回数」ですが、ともに2023年1月にピークを迎えています。
以上、3点の理由から、2022年11月から翌年の1月にかけて、LampのSpotifyの月間リスナーは大幅に伸びました。
そして8月にはついに月間リスナー数200万人以上という大台を達成します。
サブスクが開いた道
2018年にSpotifyやApple Musicなどのサブスクが解禁された際、Lampの染谷氏は懐疑的な反応を見せていました。
しかし2022年、山下達郎による「サブスク解禁を一生しない」という発言に関する記事に、次のようなツイートをします。
この後にもツイートが続くのですが、サブスクに対して肯定的なトーンとなっています
ここまで多くの海外の人々に聴かれたのも「サブスクのある時代」だったからこそで、Lampはまさに稀有な成功例だと言えます。
2021年からサブスクの再生数が急激に増え、印税収入がかなり増えたLampのメンバーは、2023年に三人で会社を設立します。
かつて「十数年ずっと世の中に無視されてきた」と語ったLampは、いまや日本を超えて海外から認められ、音楽的にも商業的にも大きな成功を収めるようになりました。
3. なぜ人気になったか
- Lampの淡くメランコリックな曲調がTikTokの「日常的な風景」を演出するのに効果的だった
- Lampの音楽性やファン層がTikTokのユーザー層(10-20代の英語圏の女性)に合致していた
- アルバムジャケなどのビジュアル面も海外リスナーを惹きつける要因に
Kaedeの海外人気
最後に、日本の女性アイドルグループ「Negicco」のメンバー、Kaedeについても触れておきたいと思います。
というのも、彼女のアルバムのプロデュースをウワノソラの角谷博栄とともにLampの染谷大陽が担当したことで、海外でそれらの楽曲が注目を受けてるのです。
Spotifyではこのアルバム収録曲の再生数がずば抜けて高く、月間リスナー数も27万人とNegiccoの7800人を遥かに超えています。
そしてこのSpotifyの月間リスナー数の経緯を見ると、2022年10月から翌年の1月にかけて急激に増えています。
楽曲のリリース自体は2020年なのに、何故2年後に急に伸びてるのでしょうか。
考えられる理由に、先ほども取り上げたLampの入門用プレイリスト「This Is Lamp」の存在が挙げられます。
というのも、実はこのプレイリストにはLampの曲のみならず、LampがプロデュースしたKaedeの曲も多数収録されているのです。
Lampの月間リスナー数も同時期に大きく伸びてることから、恐らくプレイリストを通して彼女の曲が多くの人に聴かれたのでしょう。
このことから、今後Lampの海外人気が高まるにつれ、Kaedeの海外人気もそれに比例して高まることが期待されます。
終わりに
ここまでLampがどのように海外で人気になったか見てきました。
サブスクや海外ツアーなどで徐々に知名度を高めたLampは、TikTokで爆発的にバズり、海外で多くの人に聴かれるようになります。
ここまで読んで、Lampのことを「一時的なTikTokブームにたまたま乗っただけのバンド」と考える人もいるかもしれません。
しかし、果たしてそうでしょうか。
例えばインドネシアの歌手で、LampファンだというVira Talisaは、Lampの名曲「さち子」に大きく影響を受けた曲を出しています。
またサンフランシスコのドリームポップバンドで、同じくLampの大ファンを公言する「The Bilinda Butchers」も、Lampをフィーチャリングした曲を出しています。
また国内でも松任谷正隆やキリンジの堀込高樹に絶賛されるなど、Lampはその音楽性から同業者たちからも高く評価されています。
もしLampが本当にただの一発屋だったならば、「ゆめうつつ」以外の曲がバズることも恐らくなかったでしょう。
自分たちの音楽が持つ力を信じ、時代に左右されない高いクオリティの楽曲を出し続けたからこそ、Lampは国を超えて多くの人々に共感され、支持されたのだと自分は考えます。
なお、翌月の10月にはついに5年ぶりの新譜のリリースが予定されています。
またその人気にも関わらず長らく廃盤だった1stや2ndのアルバムも、今年の6月からついに再発されることになりました。
こうした動きもあり、Lamp熱はこれからより一層高まることが期待されています。
Lamp人気は今後、国内外でどのような広がりを見せるのか、これからも引き続き注視していきたいと思います。
なおこの記事について、何か疑問点や追加情報、修正すべき箇所などございましたら、是非私のほうまでご連絡頂けますと幸いです。
最後までお読み頂き、
ありがとうございました。
年(西暦) | 主な出来事 |
---|---|
2000 | 染谷大陽、永井祐介、榊原香保里でLamp結成 |
2006 | 韓国で初ライブ(韓国ではその後2008年、2010年、2017年にも開催) |
2015 | 「A都市の秋」がReddit経由でバズり、4chanでLampの話題が挙がるように |
2017 | 中国・台湾・香港 8都市ツアー、サブスク配信の「A都市の秋」がバイラルチャートに |
2018 | アルバムのサブスク配信開始、初のインドネシア公演、8thアルバム『彼女の時計』発売 |
2019 | Lamp曲のランキングを開催、「A都市の秋」とFortniteを流す謎のYouTubeのブーム |
2020 | Spotifyの月間リスナーが10万人に、RedditでLampのサブレディットが作られる |
2021 | TikTokで「ゆめうつつ」が爆発的にバズり、人気がYouTubeやサブスクにも波及 |
2022 | Lampの他の楽曲も次々にTIkTokでバズる、「恋人へ」のジャケを再現するブームが |
2023 | TikTokで「ゆめうつつ」がインフルエンサー達に使われ、人気がさらに急上昇 |
※本記事のデータは全て2023年9月頃に収集したもので、変動する可能性があります
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